PeplinkルーターのSIMスロットとフェイルオーバー動作の挙動

技術情報Peplink,通信安定

PeplinkのBR2Proは4つのSIMスロット(2つの通信モジュール)を搭載しているルーターです。

この記事ではBR2 ProがどのようにSIMを切り替えるのか、特に優先度の異なるWANと、同一モジュール内のスタンバイSIMが競合した場合の動作について検証します。

BR2 ProのSIMスロット仕様

BR2 Proには、2つの独立した通信モジュールが搭載されています。

  • Cellular 1: AスロットとBスロットを持つ
  • Cellular 2: AスロットとBスロットを持つ
各CellularのAスロットにSIMを1枚ずつ入れている

重要な点は各モジュールは、A/Bどちらか一方のスロットしか同時にアクティブにできないという仕様です。

例えばCellular 1がAスロットを使っている間、Bスロットは完全にスタンバイ状態となります。 これによりBR2 Proは最大で「Cellular 1のどちらかのSIM」と「Cellular 2のどちらかのSIM」の2回線を同時にアクティブにできます。

下記はイメージ図です。
通信モジュール=レジ
レジは1人ずつしか使えないので、どちらかはスタンバイになるということです。

Peplinkの優先度設定

Peplinkの管理画面(Dashboard)では、WAN接続の優先度を細かく設定できます。

優先度1にdocomo、優先度2にSoftbank

例えば、以下のように設定したとします。

  • 優先度1: Cellular 1(docomo)
  • 優先度2: Cellular 2(Softbank)

この設定により通常時はCellular 1が使用され、Cellular 1が通信障害などでダウンした場合にCellular 2に自動的に切り替わります。

検証:優先度1のSIMがダウンした時の挙動

ここで一つの疑問が生まれます。

以下の状況でメイン回線(1A)がダウンした場合、通信はどちらに切り替わるのでしょうか?

  • Cellular 1 (Aスロット): SIM A – WAN優先度1
  • Cellular 1 (Bスロット): SIM B – スタンバイ (↑1Aと同じ優先度1のモジュール)
  • Cellular 2 (Aスロット): SIM C – WAN優先度2
写真ではSIMが2枚しか入っていませんが、検証では3枚使用しています

検証環境と手順

上記の疑問を解消するため、以下の設定で検証を行いました。

  1. WAN優先度設定
    • Cellular 1: 優先度1
    • Cellular 2: 優先度2
  2. Cellular 1設定
    • AスロットにSIM A (docomo) を挿入。
    • BスロットにSIM B (ahamo) を挿入。
    • スロット優先度を「Aを優先」に設定。
  3. Cellular 2設定
    • AスロットにSIM C (Softbank) を挿入。

この状態で1A (docomo) がアクティブになっていることを確認し、SIM Aを強制的に抜きます。

検証結果

Cellular1 AのSIMを抜くと、優先度2のCellular2のAに切り替わりました。

その裏でCellular 1はスタンバイだったBスロットへの切り替え動作(SIM認識、IP取得)を開始します。

時間経過で優先度1のCellular1 B SIMに切り替わりました。

切り替わりの流れとしては下記の用になっています。

Cellular1A(優先度1) → Cellular2A (優先度2)→ Cellular1B(優先度1)

結論

通信断時には接続の即時性を優先して低い優先度のCellular2に切り替わり、復旧時には設定された優先度を優先する動作をします。

この挙動を理解することで、一時的なキャリア障害が発生した際も、BR2 Proがどのようにして通信の途絶を最小限に抑えつつ、最適な回線(優先度の高い回線)へ復旧しようとするかが分かります。

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