イリジウム衛星とは? Starlinkとの違いを比較|ビジネスを止めない通信バックアップをPeplinkで構築

海上や山間部、または災害時など、地上の通信網が不安定な環境で衛星通信の重要性が増しています。特に話題のStarlinkと信頼性で知られるIridium(イリジウム)は、導入検討の筆頭候補でしょう。
しかし自社の用途に本当に合っているのはどちらでしょうか。
本記事ではこの2大サービスを徹底比較し、ビジネスを止めないための最適な構築方法を解説します。
本記事で分かること
- イリジウム衛星の3つの大きな特徴(Starlinkとの根本的な違い)
- 両サービスを二者択一ではなく両立させるべき理由
- Starlinkとイリジウムを自動で切り替え、コストを最適化するPeplinkの仕組み
イリジウム衛星とは?ビジネスの生命線を守る通信網
Starlinkが宇宙のインターネットプロバイダーとして登場する前から、過酷な環境で活動する人たちから信頼を置かれてきた衛星通信サービスがあります。
それがイリジウムです。
イリジウムを理解する上で重要なのは、高速・大容量ではなく信頼性を追求したサービスであるという点です。それはビジネスにおける万が一の事態、まさに生命線(ライフライン)を守るために設計されています。
その信頼性を支える3つの大きな特徴を見ていきましょう。
特徴1:真の全球カバレッジ
一般的な通信衛星がカバーできない北極や南極点を含む、文字通り地球上のあらゆる場所で通信が可能です。
海の上、山々の頂、砂漠の真ん中でもイリジウムは繋がり続けます。
このどこでも繋がるという安心感こそが、イリジウムが選ばれ続ける最大の理由です。
特徴2:高い耐障害性
イリジウムの強靭さは、仕組みにあります。
地上約780kmの低軌道上に配置された66機の衛星が、網の目のように連携。衛星から衛星へと直接通信を中継(クロスリンク)していきます。

このため地震や津波で特定地域の地上インフラが壊滅的なダメージを受けたとしても、宇宙空間の衛星ネットワーク自体は影響を受けません。 通信は宇宙を経由して、無事な他の地上局(ゲートウェイ)を使って継続されます。
ローカルな災害に左右されない災害対策(BCP)と言えるでしょう。
特徴3:携帯性と省電力
イリジウムは、衛星電話のような片手で持てる端末や、手のひらサイズの小型データ通信端末で利用できます。
消費電力が非常に低く設計されているため、長期間のバッテリー駆動も可能です。
この特性を活かし、コンテナ追跡やパイプライン監視、気象ブイといった電源の確保が難しい場所でのIoT(モノのインターネット)通信にも広く活用されています。
結論としてイリジウムは快適なインターネットのためではなく、どんな状況下でも、絶対に途絶してはならない通信を確保するためのサービスです。
イリジウムとStarlink比較 – 用途でわかる最適な選択
イリジウムの本質を理解した上で、比較されがちなStarlinkも見ていきましょう。
この2つのサービスは、どちらが優れているかという視点で比べるべきものではありません。
なぜなら何を目的として作られたかが根本的に異なるからです。
以下の比較表を見れば、その違いは一目瞭然です。
| 比較項目 | Iridium(イリジウム) | Starlink(スターリンク) |
|---|---|---|
| 周波数 | L (低周波・長波長) | Ku/Ka (高周波・短波長) |
| 得意なこと | 音声通話、ショートメッセージ、 ごく少量のデータ通信、天候に強い | 高速・低遅延なブロードバンド通信 |
| 通信速度 | 低速 (数kbps 〜 数百kbps) | 高速 (数十Mbps 〜 200Mbps以上) |
| 端末サイズ | 小型・携帯可能 (衛星電話、IoT端末など) | 中型・据え置き型 (中型のピザボックス程度) |
Starlinkはこれまでインターネットが利用できなかった場所で、都市部と変わらない快適性を提供することです。 現場から高画質な映像を送ったり、複数人でのWeb会議をスムーズに行ったりと、業務効率を大幅に向上させることができます。
一方イリジウムが提供するのは、どんな状況でも失われない確実性です。
速度は速くありませんが、低速ながらも途絶えない通信は、企業の事業継続や人々の安全を支える基盤となります。
二者択一ではなく、両方の利点を活かすという発想へ
Starlinkとイリジウムの特性を考えると、ビジネスの継続性を確保するためには、どちらか一方を選ぶことが最適解とは限りません。
- 現場の業務効率を上げるためには、Starlinkの高速通信が求められます。
- 一方で万が一の事態に事業の停止を避けるためには、イリジウムの確実性も必要です。
この2つのニーズは、決して相反するものではありません。 むしろこれからのビジネスインフラは、この両方を満たすことが望まれます。
ではどうすれば特性の異なる2つの衛星通信を効率的かつシームレスに連携させることができるのでしょうか。
Peplinkが実現するハイブリッド通信ソリューション
Starlinkの高速性とイリジウムの高信頼性。
これら両方の利点をシームレスに連携させることが可能なのは、Peplinkルーター(SD-WANルーター)です。
SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)とは、特性の異なる複数のインターネット回線をソフトウェアによって最適にコントロールする技術です。
Peplinkのルーターは、このSD-WAN技術により、ネットワーク全体のトラフィックを管理・制御する役割を果たします。
Peplinkが可能にするフェイルオーバー
Peplinkのルーターを導入することで、具体的にどのような通信環境が実現するのか。
事業活動の状況に応じた3つの動作例を紹介します。
シナリオ1:通常業務
- 状況: 現場での業務効率を最大化したい。
- Peplinkの動作: 高速なStarlinkと、安定した4G/5G回線をPeplink独自のSpeedFusion™技術により、2つの回線を束ねる(ボンディングする)ことで、途切れにくい通信環境を構築します。
イリジウムはスタンバイ回線として待機しています。

シナリオ2:一時的な通信障害
- 状況: 突然の豪雨でStarlinkの通信が不安定になった。
- Peplinkの動作: Starlinkと4G/5G回線をボンディングしていたが、Starlinkの通信品質低下を検知。
その瞬間、通信を自動的かつシームレスに4G/5G回線へと切り替えます。(ホットフェイルオーバー)
これによりWeb会議の中断やデータ送信の失敗を防ぎます。
イリジウムはスタンバイ回線として待機しています。

シナリオ3:大規模災害など非常事態
- 状況: 地震や台風で地上の通信インフラが広範囲にわたって麻痺。Starlinkも4G/5Gも利用できない。
- Peplinkの動作: あらゆる通信手段が絶たれたことを検知すると、Peplinkはイリジウム衛星回線へと接続を切り替えます。 高速通信はできませんが、機器の死活監視、GPSによる位置情報、テキストベースでの状況報告といった、事業継続に最低限必要なクリティカルな通信を維持し、ビジネスの完全停止という最悪の事態を防ぎます。

メーカー同士の連携
このハイブリッド通信というソリューションは、単なる机上の空論ではありません。
なぜならPeplinkとイリジウムは、公式に戦略的パートナーシップを締結しているからです。
これは両社の製品・技術の連携がメーカーレベルで検証・保証されていることを意味します。
またPeplinkはStarlinkの公式テクノロジープロバイダーとしても認定されており、多様化する衛星通信を統合するハブとして、中心的な役割を担っています。
このようにPeplinkは、単一の回線に依存するリスクを軽減し、あらゆる状況を想定した多層的なバックアップ体制を自動で構築します。
Peplinkはコスト効率を最大化できるのか?
高信頼性な通信手段の導入には、コストに関する懸念が伴います。
特にイリジウムは、従来の携帯電話と同じ感覚で日常的に利用した場合、通信費が非常に高額になります。 その理由はイリジウムの料金体系にあります。
イリジウムの料金体系(注:契約プランにより変動します)
イリジウムの料金は、大きく分けて2つの要素で構成されています。
- 月額基本料金(維持コスト) たとえ一度も通信しなくても、回線を維持するために毎月発生する固定費用です。 KDDIの料金プラン(2025年10月改定後)では、月額11,600円からとなっており、これはバックアップ回線としての維持費と考えることができます。
- 従量課金(通信コスト) 音声通話やデータ通信など、実際に通信を行った量に応じて加算される費用です。 この費用が比較的高額で、例えば一般的な携帯電話への通話料は20秒あたり63円(1分換算で189円)となります。 データ通信も同様に高価なため、メイン回線として常用するのは現実的ではありません。
※2025年10月段階の情報です。
Peplinkによるコスト削減ロジック
ここでPeplinkのネットワーク制御機能が重要になります。
Peplinkルーターは、高額な従量課金が発生するイリジウム回線の利用を、あらかじめ設定した優先順位に基づき、緊急時のみに限定することが可能です。
つまり通常時はコストの安い4G/5GやStarlinkといった回線を優先的に利用し イリジウムは待機系のバックアップ回線として機能します。
これにより月々の支払いはイリジウムの月額基本料金という予測可能な固定費が中心となり、 突発的で高額な従量課金の発生を最小限に抑えることができます。
BCP(事業継続計画)の観点から見れば、これは万が一の事態に備えつつ、平常時の通信コストを最適化する合理的な運用方法と言えます。
結論としてPeplinkは、イリジウムが持つ高信頼性という利点を最終バックアップとして確保しつつ、その高額な通信コストという課題を回避するための、効率的なソリューションです。
まとめ
本記事ではイリジウムとStarlinkという2大衛星通信の違いから、それらを活用して事業継続性を高めるためのソリューションまでを解説しました。
最後に本記事の要点を改めて整理します。
- Starlinkとイリジウムは目的が異なる衛星通信となります。圏外エリアでの業務環境を構築するStarlink。 そして確実性を追求し、いかなる状況でも通信を維持する高信頼性が特長のイリジウム。 両者の特性を理解し、用途に応じて使い分けることが重要です。
- ハイブリッド通信による多層的な構成事業継続性を高めるためには、どちらか一方を選ぶのではなく、Starlinkの高速性とイリジウムの高信頼性の両方を組み合わせた、多層的な通信環境を構築することが有効な手段となります。
- Peplinkがその中核を担う PeplinkのSD-WANルーターは、特性の異なる複数の回線を管理・制御する中核として機能します。 通常時から非常時まで、通信の自動化とコスト最適化を実現する、ハイブリッド通信に適したソリューションです。
これからの時代の事業継続は、単一の通信網に依存するのではなく、いかに効率的に、多層的なバックアップを構築できるかにかかっています。
私たちはお客様のビジネスの現場、課題、そしてご予算に合わせて、この最適なバックアップの構成をご提案します。 ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
▼ 構成相談・お見積りはこちら(無料)▼
Q&A
Q1:OneWebも使えますか?
A1:動作確認済みです。
Q2:Starlinkやイリジウム、SIMの提供なども行っていますか?
A2:弊社では行っておりません。お客様自身でご用意していただく必要がございます。
Q3:購入前に動作確認や検証を行いたいです
A3:原則貸し出しは行っておりませんが、ご用件に応じて対応可能な場合もございます。下記フォームより問い合わせください。


















