【実演解説】SpeedFusion VPNのグラフ波形はどう読む?Peplinkで映像配信を検証してみた

皆様こんにちは。いざ配信を始めたら、映像がカクカクして止まってしまった…そんな経験はありませんか?
Peplinkルーターは弊社で日本語マニュアルを用意している為、ルーターの初期設定やSpeedFusion VPNの構築は出来る方が多いです。 しかし、SpeedFusion VPNのプロファイル項目やVPNグラフ波形は項目も多い為、実際に使う時に「何をどう見ればいいのか?」と思う方も多いと思います。
今回は、PCでOBS Studioを使いYoutubeへと配信するといったシチュエーションで、PeplinkルーターとSpeedFusion VPNのどこを確認して設定変更をするのか? 実際の使用時のデモンストレーションを行って最適化を行っていきます。
※実際に使用時のデモンストレーションの為、今回は使用するハードウェアやソフトウェアの設定は省略します。
初期セットアップ後の確認事項
今から行う内容は下記が終わった後、実際に使用開始後の最適化を主としています。
OBS Studio自体の解説や、PeplinkやSpeedFusion VPNの設定方法は構成やルーターにより参照するマニュアルが違う為、割愛します。
- クライアント(現場側)設置のPeplinkルーターの初期設定済み
- サーバー(拠点側)のPeplinkルーターとの間でSpeedFusion VPN構築済み
デモ環境の紹介
- 使用機材:Peplink(例:MAX BR2 Pro)、SIM2枚(docomo+SoftBank)、PC(OBS Studio)
- 構成:クライアントの現場側想定にMAX BR2 Pro、サーバーの拠点側想定としてFusionHubを設置し、SpeedFusion VPNを構築
- 前提:初期設定+SpeedFusion VPNは完了済み

配信スタート前の確認
通信状況や構成による部分もありますが、今回は主に下記を見ていきます。
✅ 電波強度と接続状態を確認する
✅ YouTube Studioの「ストリーム状態」を確認する
✅ SpeedFusion VPNのグラフを見てレイテンシやロスを把握する
アンテナ状態の確認
PCとMAX BR2 ProをLANケーブルで繋ぎ、WebAdminに入りました。
SpeedFusion VPNはFusionHubが「🟩Established」となっておりVPN接続は問題ないですが、Cellular2がLTE-Aとなっています。
MAX BR2 Proは5G対応ですので、現在の環境では電波が悪いようです。

通信環境が悪い要因は色々ありますが、例えば下記パターンもあったりします。
- Cellularアンテナを全て取り付けていない。
- Cellularアンテナが緩んでいる
MAX BR2 Proは5G対応でCellular x2の為、8本のCellularアンテナ取り付けが必要ですが本数も取り付けも問題無いようです。
その為、次はルーターの設置場所をオフィスから窓際にしてみましょう。

窓際に移動した所、どちらのCellularも5Gになりました。電波強度は4本ですが問題無いと言えます。


実際にYoutube配信を行ってみる
では早速Youtubeへの配信を行ってみます。
OBS Studioで弊社の【3分で丸わかり!】切れない接続 マルチ回線ルーターの元動画を流すようにしました。

Youtube上での配信画面を録画したのが下記ですが、途中何度か動画が止まっているのでこれでは配信として成り立ちません。

原因を分析する為にYoutube及びPeplinkルーターの記録を見ていきます。
Peplinkルーターの設定画面であるWebAdminでも、上部メニューAdvanced>左側メニューSpeedFusion VPNのリアルタイムのグラフ波形で通信状況をチェックしていました。
レイテンシが異様に高い訳では無く数十msで落ち着いている為、映像配信スループットはボンディングの帯域を超えてはないようです。
しかし、アップロードの品質欄にパケットの順序入れ替えが多いタイミングもあり、品質としては安定していない事が分かります。
下記のSpeedFusion VPNグラフ波形の詳細はこの記事をご覧ください!

Youtube Studio上でもストリームの状態は要改善のメッセージが出てしまっています。

では対策としてSpeedFusion VPNのプロファイルからWAN SmoothingをMaximumに設定してみます。
PeplinkのSpeedFusion VPNはデフォルトで同じ優先度内のWAN回線がボンディングされますが、その場合元のデータパケットは各WAN回線に分割して送られます。
映像・音声といったリアルタイム用途では少量のパケットでもデータとして揃わないと、映像や音声の乱れや一瞬止まったりと症状として現れます。
WAN SmoothingをONにすると、各WAN回線に元データが複製されて送られるので、映像配信といったリアルタイム用途では必須です!

VPN設定変更後、WebAdminに戻ってWAN Smoothingの適用可否をテストしてみます。
UDPで5Mbpsのデータを一分間流してみましたが、各WAN回線に元データである5Mbpsが複製されて送付されているのでグラフ上の数値が10Mbpsになっている事が分かります。
ではこれで再度映像配信を行ってみましょう。


WAN Smoothingにより各WAN回線のCellularにデータが複製されて送られる為、映像が止まる事無く流れています。

ここで難しいのが、下記SpeedFusion VPNグラフ波形の結果を見ていると「不安定な品質なのでは?」と思われるのではないでしょうか。
スループットの波形はジグザグしており、レイテンシも10kと高い瞬間があり、パケットロスのアイコンも頻発している…でも大丈夫です!
スループットがジグザグでも大丈夫?
配信中にSpeedFusionのグラフを見ると、スループットが数Mbpsの範囲で上下してジグザグしていることがあります。一見すると不安定に見えますが、実際の映像がヌルヌル動いて止まらないのであれば問題ありません。
YouTube LiveやOBSは一定のバッファを持っており、多少の帯域変動であれば吸収してくれる仕組みがあります。 そのため「グラフは揺れているけど映像は安定している」状態は正常動作の範囲と考えて大丈夫です。
パケットロスや順序入れ替えは?
DWBは複数回線の遅延や帯域を見ながらリアルタイムで分散比率を調整します。
その過程で一時的にパケットの順番が前後することがあり、SpeedFusionが自動的に並び替えて処理しています。 したがって、この程度の小さな値は映像配信に悪影響を与えません。

Peplinkルーターは多機能な分、通信状態をどう判断すればよいか迷うこともあります。
今回の記事でお伝えしたポイントは以下の2つです:
- スループットのグラフがジグザグしていても、映像が止まらなければ問題なし
- YouTube Studioの「ストリーム状態」とSF VPNの波形を突き合わせて確認すれば、状況を正しく判断できる
まずはこれらをチェックすることで、配信や通信が「本当に問題なのかどうか」を切り分けられます。
次のステップ
- 配信がカクついたら → OBSのビットレートとSF VPNのグラフを照らし合わせる
- グラフが揺れていても配信が安定していれば → 問題なしと判断できる
- ロスや遅延が大きく安定しない場合 → WAN SmoothingやFECの設定を見直す